寄付金を贈る際の封筒書き方マニュアル

誰かのために、社会のために寄付金を贈るという行為は、とても尊いものです。しかしその善意を届ける際、ちょっとしたマナーや形式を知らずにいると、相手に不快感を与えてしまったり、意図が伝わりにくくなってしまうことがあります。特に『封筒の書き方』や『表書きの選び方』、『封筒の種類』などは、知っておくべき基本的なルールがいくつも存在します。

寄付先が神社・寺院であったり、被災地支援のための義援金であったり、あるいは地域のお祭りに対する奉納金であったりと、状況によって使う封筒や書き方のマナーは微妙に異なります。加えて、個人としての寄付と法人名義での寄付では書き方のフォーマットも異なるため、事前の知識が必要です。

また、寄付額によっても封筒の使い分けや書式の工夫が必要です。たとえば、少額寄付の場合には派手な祝儀袋ではなく、簡素ながら清潔感のある白封筒を用いる方が適していることもあります。一方で、高額な寄付の場合には水引付きの正式な封筒が推奨され、さらには中袋の記載内容にも注意が求められます。

本記事では、そうした寄付金に関する『封筒の書き方』について、場面ごとに詳しく解説します。
具体的には以下のようなポイントを網羅しています：

• 寄付金の『表書き』の選び方とその意味

• 金額の書き方と適切な記載方法

• 封筒や中袋の種類・用途別の使い分け

• 水引の結び方や色の意味

• 少額寄付・法人寄付・義援金などケース別対応

寄付という行為の価値を損なわないためにも、適切な形式やマナーを理解しておくことは、受け手に対する『敬意』の表れでもあります。封筒の書き方一つにも心を込め、相手に失礼のないように贈ることが、より良い支援につながるのです。

寄付金を贈る際の封筒の書き方

寄付金の表書きとは？

寄付金を封筒に包む際、最も目につくのが表書きです。これは受け取る相手に対する礼儀と信頼の証でもあります。表書きの言葉にはいくつか種類があり、贈る先や目的によって適切な表現を選ぶ必要があります。

主な表書きの例と用途

表書きの記入マナー

• 縦書きで中央に大きく記載する

• 筆ペンや毛筆を使用し、楷書で丁寧に

• 字が曲がらないように、下書きするのも可

• 濃い黒インクを使用する（薄墨は弔事用）

寄付金の金額の記載方法

金額は表書きのすぐ下や中袋、あるいは封筒裏面に記載します。特にフォーマルな場では記載形式にも注意が必要です。金額を記すことで、透明性と誠意が伝わります。

金額記入時のポイント

• 表記は縦書き、漢数字を用いる（例：「金壱万円也」）

• 『金』を最初に記し、『也』で締めることで改ざん防止になる

• 円記号（￥）やアラビア数字（10000円）は避けるのが正式

• 中袋がある場合、封筒本体ではなく中袋に金額を書く

正式な漢数字の一例

中袋や封筒に『金壱萬円也』と丁寧に書くことで、格式ある印象を与えます。

寄付金用の封筒の種類

寄付金を包む封筒には、贈る場面や金額の規模に応じて適した種類があります。封筒の選び方一つで、寄付の印象は大きく変わります。

主な封筒の種類と特徴

選ぶ際の注意点

• 光沢が強すぎるものや、カジュアルすぎる封筒は避ける

• 白地を基調にし、落ち着いたデザインを選ぶ

• 水引付き封筒は、金額や相手先によって調整が必要

寄付金を書き込む際のマナー

封筒に情報を記載する際は、文字の丁寧さ・整い具合がそのまま寄付者の礼儀として受け取られます。記入漏れや誤字にも注意が必要です。

正しい書き込み方法

• 表：中央に表書き（例：「寄付金」）、その下に名前

• 裏：左下に住所、右下に日付や金額を記入することもある

• 中袋：金額・住所・氏名を明記（封筒と整合性を持たせる）

氏名・団体名の記載方法

• 個人名の場合 → フルネームで記載（例：山田 太郎）

• 法人名の場合 → 例：「株式会社〇〇　代表取締役　山田太郎」

• 敬称は基本的に付けない（特に代表者名には「様」や「殿」を付けない）

書き損じた場合の対応

• 書き間違えた封筒は使用せず、新しいものに書き直す

• 修正液や二重線などの訂正はNG

• 下書きをした場合は完全に消すか、裏側に書く

寄付金専用の白封筒の特徴

白封筒の選び方

白封筒は寄付におけるもっとも汎用的な封筒です。シンプルであるがゆえに、選び方にはこだわりたいところです。

選び方のチェックポイント

• 『透けない仕様』：中身が見えない加工があると安心

• 『厚み』：厚手でしっかりしたものは正式な場に適している

• 『のり付き or 封シール付き』：封をしっかり閉じられるものが望ましい

• 『和封筒（縦長）』：洋封筒より格式があり、好印象

避けるべき封筒例

• キャラクター付き・柄付き封筒

• 派手な色やデザイン封筒（赤・ピンク・金など）

• 企業ロゴが入ったもの（特に法人以外では不適切）

白封筒の使いどころ

白封筒はシーンを選ばず幅広く使えるのが強みですが、その使用場面にも一定の判断基準があります。

適した使用シーン

• 個人による地域活動や学校への寄付

• 少額の寄付（1,000円〜10,000円程度）

• 書類やメッセージと一緒に手渡す寄付

• 企業などによる郵送対応時の簡易封筒として

不向きな使用シーン

• 結婚式・法事などで形式が重んじられる場

• 宗教儀礼が関わる奉納

• 高額寄付（10万円以上など）での格式ある贈呈

白封筒のメリット

白封筒には以下のような多くの利点があります。特に初めて寄付する方や、形式に悩んでいる方には安心して使える選択肢です。

白封筒の利点まとめ

• 『汎用性』：宗教・団体・金額の多寡を問わず使える

• 『低コスト』：市販のもので簡単に入手でき、コストも抑えられる

• 『相手に誤解を与えない』：主張が少ないため、相手に配慮した印象を与える

• 『準備のしやすさ』：コンビニや文具店で手軽に入手可能

• 『簡易だけど失礼にならない』：丁寧に書けば十分フォーマルに見える

寄付金を入れるための中袋の使い方

中袋に記載する内容

中袋（なかぶくろ）は、外側の封筒に包まれる内袋で、寄付金そのものと情報を直接収める役割を担います。中袋に記載すべき情報は明確に定められているわけではありませんが、受け取る側にとって確認しやすいよう、以下の情報を記載するのが一般的です。

記載する基本情報

• 『金額』：封入している寄付金の額（漢数字で記載する）

• 『氏名』：寄付者のフルネーム

• 『住所』：連絡先の明示。郵送でのやり取りが必要になることも

• 『日付』：寄付日（西暦・和暦どちらでも可）

金額の記載例（縦書き・漢数字）

注意点

• 筆ペンやボールペンで、濃く丁寧に記載する

• 間違えた場合は書き直しが原則（修正液NG）

• 情報は封筒と一致させることが信頼につながる

中袋のデザイン選び

中袋のデザインは、内容の正式さと用途に応じて選ぶことが重要です。華美すぎるものは好まれず、清潔感と実用性が重視されます。

中袋の選び方のポイント

• 『無地またはシンプルな罫線』があるものを選ぶ

• 透けにくい素材のもの（お札が見えない仕様）

• 市販の中袋付き封筒には表書き欄が印刷されているものも多く便利

• 封をしっかり閉じられるタイプ（のり・シール付き推奨）

NGデザイン例

• カラフルな柄模様が入ったもの

• メッセージカード風の可愛いもの

• ビジネス用の給与袋など流用するのは避ける

中袋はお金と一緒に渡す『直接的な礼』の表現でもあります。だからこそ、外見は控えめながらも丁寧な選び方が求められます。

少額寄付の場合の封筒書き方

少額寄付の表書き例

少額寄付とは、1,000円〜10,000円未満程度の比較的金額が抑えられた寄付です。少額だからといってマナーをおろそかにせず、気持ちを伝える表書きを心がけましょう。

表書きの適切な文言例

表書きマナーのポイント

• 縦書きで中央に書くのが基本

• 筆ペンまたは黒インクのペンで、力強く丁寧に

• 字の大きさにメリハリをつけ、読みやすく配置する

少額でも表書きを正しく記すことで、誠意と敬意が伝わりやすくなります。

少額寄付の金額記載方法

金額の記載は中袋や封筒裏面に行います。少額寄付でも正式な書き方を取り入れることで、信頼と丁寧さを演出できます。

正式な記載例（漢数字）

• 1,000円 → 金壱仟円也

• 3,000円 → 金参仟円也

• 5,000円 → 金伍仟円也

書く場所と形式

• 中袋の中央または右上に記載

• 外袋の裏面左下に補足的に記載するケースもあり

• アラビア数字ではなく、旧字体の漢数字を用いるのが正式

メモ的に添えたい場合

寄付の目的や意図が明確であれば、以下のような一文を添えるとよい例：

「地域活動への支援として、心ばかりではございますが寄付させていただきます。」

法人寄付の場合の封筒書き方

法人名の記載方法

法人からの寄付の場合、表書きや封筒裏面、あるいは中袋に法人情報を正確に記載する必要があります。特に正式な文書や領収書が必要になるケースが多いため、記載ミスは避けなければなりません。

法人名の書き方例

• 封筒表書きの下段または裏面に記載

• 例：「株式会社〇〇」または「〇〇株式会社」

• 商号の正式名称を略さず記入する（例：『（株）』→『株式会社』）

表記例まとめ

法人名とともに、連絡先や部署名を併記する場合もあります。

代表者の名前の書き方

法人が寄付をする場合、代表者名の記載も必要です。これは責任者を明確にし、領収書の発行や受領確認に活用されます。

記載方法

• 法人名の下に代表者名を記載（改行するのが一般的）

• 『代表取締役』『理事長』などの役職も明記する

• 敬称（様・殿）は付けないのが通例

記載例

• 表書きの下段または裏面に記載

• 中袋に同様の内容を記載してもよい（整合性を取る）

寄付金と義援金の違い

義援金の表書きの注意点

義援金とは、自然災害や重大事故などの被災者を支援するための寄付です。通常の寄付とは意味合いが異なるため、封筒の表書きにも注意が必要です。

表書きの例と注意点

表記の注意

• 『御祝』や『寄付金』など通常の言葉は使わないこと

• 被災者に敬意と慎みを表す表現を選ぶ

• 災害名を加えるとより明確（例：「令和7年能登半島地震 義援金」）

義援金の場合の封筒の種類

義援金を包む封筒は、慎み深く、格式を意識した選択が必要です。派手すぎる封筒や一般的な祝儀袋は適しません。

推奨される封筒の種類

• 『白封筒（無地）』：最も無難で慎ましい選択

• 『奉書紙タイプ』：格式が高く、改まった場に適する

• 『志』の印字入り封筒：弔意や支援の気持ちを表す

避けるべき封筒の例

• 『御祝』と記載された祝儀袋（災害支援には不適切）

• カラフルで華やかな封筒（被災者への配慮に欠ける）

• 水引が赤白のもの（慶事向けなのでNG）

義援金に適した封筒を選ぶことで、支援の誠意と敬意が正しく伝わります。

寄付金の領収書について

領収書の必要性

寄付金や奉納金を贈る際、受け取る側から『領収書』を発行してもらうことは、単なる記録以上の意味を持ちます。特に以下のような理由から、領収書の受領は重要視されます。

領収書が必要な主な理由

• 『税制優遇』：認定NPO法人や特定公益増進法人などへの寄付は、確定申告によって寄付金控除を受けられる場合がある。

• 『支出の証明』：企業や団体の場合、会計処理に必要不可欠。

• 『支援の透明性』：個人でも家計簿や支援記録の一部として保存価値が高い。

特に必要性が高いケース

領収書は、ただの紙切れではなく、支援者と受け取り手をつなぐ公的な記録ともいえる存在です。

領収書の書き方と注意点

領収書を発行する際は、正式な記載内容に則る必要があります。誤った書き方をしてしまうと、税務上の証明として無効となることもあります。

領収書に記載すべき項目

• 『発行日』：寄付金を受け取った日付を記載（後日でも可）

• 『金額』：寄付金額を正確に（税抜・税込の概念は不要）

• 『寄付者名』：個人名または法人名をフルネームで

• 『宛名』：発行先が明確になるよう丁寧に記載

• 『用途または但し書き』：例「寄付金として」「義援金として」

• 『受取人の名称・捺印』：団体名と責任者の押印（角印可）

注意点

• 『領収書』の文字は明記（書類タイトルとして）

• 金額の改ざん防止のため、金額の前後に「￥」「-」などを入れる

• 印鑑がないと正式書類として認められないケースも

• 電子データでの発行は受取側の同意がある場合のみ可

書式例（手書き）

お祭りや神社への奉納の際の封筒書き

奉納のための封筒の準備

神社や寺院への奉納は、宗教的・文化的に非常に尊重される行為です。その分、封筒の選び方や準備には細かな配慮が求められます。

封筒の種類と選び方

• 『白無地の奉書紙封筒』が最も正式

• 『奉納』と印字されたものも市販されている

• 水引付きの祝儀袋も可（奉納内容に応じて）

表書きの例

準備のポイント

• 新札を用意（神聖さを示す意味でも重要）

• 丁寧にアイロンなどで封筒を整えるのも可

• 神社名や神事名を封筒裏に記載する場合も

お祭りの際の特殊なマナー

お祭りでの奉納や寄付は、地域の伝統や慣習に深く根付いているため、特有のマナーがあります。

地域差のあるルール

• お祭りごとに『表書き』や『封筒色』が決まっている場合も

• 地域の自治会や氏子組織の指示に従うのが最も無難

よくある独自ルール

基本マナーの心得

• 奉納金や寄付金は新札で

• 手渡すときは一礼と共に両手で丁寧に

• 直接神主に渡す場合は、のし袋を折敷（台）にのせるのが理想

結びの方法と水引の選び方

蝶結びと結び切りの意味

水引にはさまざまな種類があり、特に『蝶結び』と『結び切り』は封筒の用途を決定づける重要な要素です。

蝶結び（ちょうむすび）

• 寄付の場合、蝶結びが基本（繰り返しの意味を込める）

結び切り（むすびきり）

• 義援金や災害支援金では『結び切り』を使用するのが通例

水引の色と種類

水引の色や本数は、封筒の用途や文化的意味によって変わります。正しい使い方をすることで、贈り手の心がより伝わります。

色と意味の一覧

水引の本数

• 『5本』：一般的な慶弔どちらでも使用

• 『7本・10本』：格式の高い贈答に使われる（法人や団体寄付）

寄付に適した水引例

水引の意味を理解した上で正しく選ぶことで、形式だけでなく『心』も正しく伝える寄付が可能となります。

まとめ

寄付金を包む封筒の書き方には、一見些細に見えるようでいて、実は非常に重要なマナーと意味が込められています。ただの形式的なものと捉えるのではなく、『寄付を贈る側の心遣い』として、丁寧に対応することが大切です。

ここまでの記事内容を整理すると、以下のようなポイントが寄付封筒において重要であることが分かります：

寄付封筒の基本マナーまとめ（表形式）

寄付という行為そのものは素晴らしいものですが、その背景には相手に対する敬意や配慮が必要不可欠です。たとえ少額の寄付であっても、封筒や書式に気を配ることで、支援の気持ちがより丁寧に伝わります。また、法人としての寄付であれば、会社としての信用にも関わってくるため、封筒の書き方一つにも企業姿勢が表れるものです。

最後に強調しておきたいのは、『寄付は形よりも心』である一方で、『形が心をより確かに伝える手段でもある』ということです。正しいマナーと形式を理解し、相手に対して真心が伝わる寄付の仕方を心がけましょう。